エコノミークラス症候群の症状は?治療法・前兆があったら対策を!

長時間の飛行機や狭い車での移動はよくありますよね。

旅行や出張などで長時間の移動を強いられる事はよくあります。

そのような座った状態で長くいる事で生じる、エコノミークラス症候群という病気をご存知ですか?

命に関わる事もあるこのエコノミークラス症候群について今回は解説していきます。

エコノミークラス症候群とは

足や下半身に出来た血栓(血液の中に生じる血の塊)が、血管の中を通り肺の血管に詰まる事で生じる病態をエコノミークラス症候群といいます。

正式な病名は「肺血栓塞栓症」または「静脈血栓塞栓症」といいます。

飛行機のエコノミークラスのような狭い席で長時間座ったまま移動する事によって発症しやすい事から、この名称で呼ばれています。

長時間座ったままでいると、足の血液循環が悪くなります。

すると血液の流れが滞ると血栓ができやすくなり、動き出す事で急に血流が促進され、血栓が血流によって運ばれて肺で血管を詰まられてしまうのです。

最近では長時間の手術や、避難生活での車中の生活などで生じる事も分かってきています。

特に2011年に起きた東北大震災後はエコノミークラス症候群が深刻な問題となりました。

足が下がっていて動かない座っている姿勢がもっとも危険です。

時間は4時間以上座ったまま動かないでいると血栓が出来てエコノミークラス症候群になるリスクが2倍になるといわれています。

ですから座ったままの場合は1時間に1回、体操・運動をする様にしましょう。

エコノミークラス症候群の症状

エコノミークラス症候群では以下のような症状が特徴的です。

・突然の胸の痛み
・呼吸困難
・息切れ
・咳
・血痰
・失神
・心拍数の増加
・意識障害
・ショック状態

エコノミークラス症候群の前兆

長時間座って動かなかった後に、以下のような症状が見られた場合はエコノミークラス症候群の前兆としての症状の可能性があります。

・足のむくみと痛み
・息苦しさ
・胸の痛み
・動機

エコノミークラス症候群は何科?

専門は「血管外科」です。

前兆があったら血管外科に診察してもらいましょう。

もし近くに血管外科がない場合は内科にいきましょう。

呼吸困難、息切れの重症度

呼吸困難、息切れの重症度には以下のような分類が用いられます。

Fletcher-Hugh-Jones分類

Ⅰ度

同年齢の健常者と同様の労作ができ、歩行、階段昇降も健常者並みにできる。

Ⅱ度

同年齢の健常者と同様に歩行できるが、坂道、階段は健常者並みにできない。

Ⅲ度

平地でも健常者並みに歩けないが、自分のペースなら1マイル(1.6km)以上歩ける。

Ⅳ度

休み休みでなければ50m以上歩けない。

Ⅴ度

会話、着替えにも息切れがする。
息切れのため外出できない。

NYHA分類(心不全の場合)

クラスⅠ

心疾患はあるが、身体活動に制約はなく、通常の労作では疲労感、動悸、呼吸苦が生じない状態。

競技スポーツも行う事ができる。

クラスⅡ

身体活動に軽度の制約があり、安静時には苦痛がないが、通常の身体活動が疲労感、動悸、呼吸苦を認める状態。

軽いジョギングやレクリエーションゴルフは出来るが、競技スポーツは苦しくてできない。

クラスⅢ

身体活動に高度の制約があり、安静時に苦痛はないが、通常以下の身体活動で疲労感、動悸、呼吸苦を認める状態。

自分のペースなら何とか家事を行なったり歩いたりする事はできる。

クラスⅣ

いかなる身体活動も苦痛を伴う状態。
安静時にも疲労感や呼吸苦がある、

また少しでも身体活動を行うと苦痛が増加する状態。

これらの重症度が高いほどエコノミークラス症候群が疑われ、緊急の対応が必要となります。

エコノミークラス症候群の原因

エコノミークラス症候群は、静脈の血液の流れが悪くなる事が原因です。

血管は動脈と静脈にわけられます。

心臓から出て行く血管で酸素を豊富に含み、身体の各組織に酸素を供給します。

静脈は心臓に戻って行く血管で二酸化炭素を多く含みます。

静脈の血液が心臓にスムーズに戻るためには足の筋肉、特にふくらはぎの収縮が必要となります。

筋肉が収縮する事で心臓のポンプ作用として働き、静脈が圧迫されて血液が心臓に戻るのです。

そのためふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれています。

飛行機のエコノミークラスのように狭い場所で長時間座っていて、足の筋肉が収縮する機会が減ると足に血液が滞ってしまいます。

また水分が不足してしまうと、血液がドロドロになり血栓が出来やすくなってしまいます。

このような条件がエコノミークラス症候群の原因となるのです。

エコノミークラス症候群になりやすい人

エコノミークラス症候群には以下のような条件がある人がなりやすいといわれています。

危険因子の強度別に紹介していきます。

危険因子 【低】

・肥満
・エストロゲン治療
・下肢静脈瘤

危険因子 【中】

・高齢
・長期臥床
・うっ血性心不全
・呼吸不全
・悪性疾患
・中心静脈カテーテル留置
・癌化学療法
・重症感染症

危険因子 【高】

・静脈血栓症の既往
・血栓性素因
・下肢麻痺
・下肢ギプス包帯固定

エコノミークラス症候群になる時間

発症してしまうまでの時間は人それぞれです。

同じ姿勢をする機会がありましたら、1時間に1回は体操をして身体を動かしましょう。

さきほどの『危険因子』に引っかかる人は、特に気をつけましょう。

エコノミークラス症候群の予防・対策

エコノミークラス症候群の予防には以下の事が効果的であるとされています。

対策①水分補給

エコノミークラス症候群の原因となる血栓は水分が不足し、血液がドロドロになる事で起こりやすくなります。

そのため水分補給は必須となります。

中でも水道水やミネラルウォーターよりも、スポーツドリンクなどのイオン飲料が好ましいとされています。

注意して起きたいのはお茶やコーヒーなどは利尿作用があるため、あまり水分補給には適していません。
アルコールも同様です。

対策②弾性ストッキングや包帯の使用

弾性ストッキングや包帯によって適度に足を圧迫する事で、静脈から心臓に戻る血液の流れを促進する効果が得られます。

ポイントとしては心臓からより遠い部分はキツめに巻き、近づくにつれて少し緩めに巻く事です。

対策③運動・体操

1時間に1度は体操をして身体を動かしてエコノミークラス症候群にならないようにしましょう。

体操は足に溜まり、滞った血液は足の筋肉(特にふくらはぎの筋肉)が収縮する事で、心臓への戻りを促進します。

・立って歩く
・スクワット
・踵上げ
・足首の曲げ伸ばし

などで足の筋肉を収縮させる事が有効です。

動画をUPしておきますので試してくださいね。

エコノミークラス症候群になったスポーツ選手

高原直泰

プロサッカー選手

静岡県清水東高校を卒業後、ジュビロ磐田に入団。
その後アルゼンチンのボカジュニアーズやドイツのハンブルガーSV、フランクフルトなどで活躍。

その後韓国のリーグや日本国内のチームでプレーし、現在は九州サッカーリーグの沖縄SVにて代表兼監督兼選手として所属している。

2002年にはJリーグ得点王、MVPを獲得。日本代表として57試合に出場、23得点を挙げている。

2002年、日韓ワールドカップを直前に控えた日本代表の欧州遠征の際の飛行機移動の際に左胸の痛みの症状を発症。

帰国後、胸の痛みに耐えながらJリーグを2試合こなしたが、痛みが極限に達し、緊急入院。

エコノミークラス症候群と診断され、日本代表のエースとして期待されていたワールドカップメンバーから落選する形となった。

エコノミークラス症候群の治療法

エコノミークラス症候群の治療法は一律ではなく、重症度や合併する疾患、深部静脈血栓の有無、治療する施設の方針などによって変わります。

治療法は大きくわけて3つあります。

薬療法

経口薬や注射を用いて、血液をサラサラにする方法(抗凝固療法)、血栓を溶かす方法(血栓溶解療法)によって治療を進めます。

カテーテル治療

カテーテルを用いて肺に生じた血栓を吸い取ったり、砕いたりする方法です。

吸い取る方法をカテーテル血栓吸引術、砕く方法をカテーテル破砕術といいます。

外科手術

肺血管内にある血栓を外科手術にて取り除く方法です。

手術にて取り除く事で症状の改善が急速に得られます。

まとめ

●エコノミークラス症候群とは長時間座ったまま動かない事が原因で発症する、肺の血管が血栓によって詰まる病態である。

●予防にはこまめな水分補給、足の運動、弾性ストッキングの着用などが挙げられる。

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