スポーツ選手に多い腰痛!腰椎分離症の治療法と予防ストレッチ・筋トレの全知識

腰を使わないスポーツはない!と言っても過言ではないほど大切な腰。

少年期・成長期のスポーツ選手に非常に多い腰痛を起こす疾患に腰椎分離症があります。

今回は腰椎分離症の原因・治療法・リハビリについて解説していきます。

腰椎分離症とは?

 

野球、バレーボール、バスケットボール、サッカー、柔道、陸上、バレエなど頻回に身体を回ししたり、屈んだり反ったりする競技に多発する腰痛を主症状とする疾患の1つです。

ジュニア期、成長期に活発にスポーツをする子に多く発症する腰痛です。

軽い腰痛だと間違った認識のまま競技を続けていると、後々大きな支障をきたす事があります。

特に10代のジュニア期、成長期のスポーツ選手に多くみられます。

よく聞く病名なので簡単に考えられやすいですが、実は腰の骨が疲労骨折を起こしている状態なのです。

主な症状としては身体を後ろに反らす動きや、上半身を捻る動きで痛みが出やすいです。

また患部の腰の骨を押すと痛みが生じます。運動後に痛みが強くなり、時にお尻や太ももに痛みやしびれが出る事もあります。

腰椎分離症の症状

分離症は疲労骨折であるといいましたが、実際どのような状態になっているのかを説明していきます。

まず背骨の仕組みについて説明します。

 

一般に背骨と呼ばれていますが、正確には脊柱と呼びます。

上から7つを頚椎、その下の12個を胸椎、その下の5つを腰椎、その下を仙骨、尾骨という骨に分けられており、まとめて脊柱と呼びます。

腰の部分にある5つの腰椎は生理的前弯と言われる、前にカーブがあるのが特徴で、このカーブが衝撃のクッションの役割をしています。

また腰椎は頸椎や胸椎と比べ、左右にひねる際の可動域が乏しいという特徴があります。

分離症は特に上から5番目の腰椎に起きやすいです。

 

腰椎を上から見た図です。
腰椎の前半分を椎体、後ろ半分を椎弓と呼びます。

 

この椎体と椎弓の境目の部分が骨折した状態が腰椎分離症です。

腰椎分離症の診断

整形外科にてレントゲンやMRI検査にて骨の状態を鑑別します。

初期の段階ではレントゲンに映りにくい事もあるため、確実な診断をするならMRIが望ましいと思います。

ジュニア期でスポーツをしていて腰が痛い場合は特に注意

 

スポーツをやっている成長期の子供で腰の痛みを訴えていたら、まず分離症を疑ってしっかりと受診する事をお勧めします。

先生
先生
スポーツをしている子供さんでは、していない子供さんの3倍発生しやすいです。

分離症初期の段階では、骨折してしまった骨も適切な治療を受けることで骨が癒合して治ります。

しかし、放っておいてそのままスポーツを続けていると骨の癒合が望めなくなり、将来的に慢性腰痛となる場合があります。

年をとったときに歩くだけでも痛くなる脊柱管狭窄症になる事もありますので、しっかりと治しましょう。

関連:脊柱管狭窄症とは?症状・原因・治療・手術・リハビリ全知識

『腰椎すべり症』を引き起こす事も

 

分離症が完治しないまま放置すると、分離症を起こした腰椎が前方へズレていってしまう腰椎すべり症になる可能性が高まります。

背骨の後ろには脊柱管と呼ばれるトンネルのような空洞があり、この脊柱管の中を血管や神経が通っています。

すべり症となるとこの脊柱管が狭くなってしまうため大事な神経を圧迫する危険性があり、足の痺れや痛みを引き起こし、長時間歩く事も困難になる事もあります。

腰椎分離症を起こしやすい動作

 

野球やゴルフ、テニスなどのスイング動作やサッカーのキック動作などの身体をひねる動作を繰り返す事が腰へのストレスとなり分離症は起きやすくなります。

またバレーのスパイク時や陸上の幅跳びや高跳び時のように後ろに大きく反る動作も椎弓へのストレスがかかりやすく分離症が起きやすくなります。

分離症は疲労骨折が主ですから、負担のかかる動作の繰り返しによって起こります。ハリガネを繰り返し繰り返し曲げているとポキっと折れてしまうようなイメージです。

先生
先生
腰椎分離症は、1回の過剰な負荷動作ではなく、練習や試合などで何度も何度も同じ負荷が加わることによっておこります。
腰椎分離症を予防するためには、オーバートレーニングをしないよう注意することも必要です。

腰椎分離症の治療法

病院で分離症と診断されたらスポーツを休止し安静にします。
基本的に骨がくっつく事を最優先させるため、腰を固定するコルセットを巻いて、腰に負担をかける動作を禁止します。

骨の損傷程度によりますが、数ヶ月のスポーツ禁止を余儀なくされる事が多いでしょう。

スポーツの復帰時期はCT、MRIなどで検査して医師からの許可を得てからにしましょう。

腰椎分離症の予防ポイント

それでは腰椎分離症にならないような身体を作るためにはどうしたらいいでしょうか?細かく解説していきます。

股関節の柔軟性が重要

腰と股関節は非常に関係性の深い関節です。

簡単に説明をしていきます。

例えばまっすぐ立った状態で上半身を後ろに反らす動きをします。

 

この時、腰椎が後ろに反る動きと股関節が後ろに伸びる動きが必要となります。

上半身が後ろに反るというのに必要な動きが10だとすると、理想は腰椎が5、股関節が5動けば力を分散させる事が出来ます。

身体をそらす時のベストな動き

腰椎が50% :股関節 50%

しかし股関節の筋肉が硬くてバランスが悪いと腰椎に負担がかかる事となります。

そのストレスが強まるほど、また回数が多いほど腰椎分離症の引き金となります。

特に股関節の前面にある腸腰筋が硬いと腰のストレスが強まります。

また立った状態で身体をひねる回転をします。

腰椎は回転の可動性が低い関節となっています。

腰椎とは逆に胸椎は回転の可動性が大きい関節となっています。

そのため身体をひねるには、腰椎の上に位置する胸椎が十分に回旋をする事が重要となります。

また股関節が内側と外側に捻る内旋、外旋という動きの柔軟性も必要となります。

身体をひねるという動きが10の力がかかるとすると、胸椎が4、股関節が4、腰椎が2くらいの割合で動けば腰椎への負担がかかりにくくなります。

身体をひねる時のベストな動き

胸椎が40% : 股関節 50% : 腰椎20%

しかし、胸椎や股関節の硬さがあるとそのバランスが崩れ腰椎へのストレスを強めてしまいます。

特にお尻周りの筋肉や背中にある広背筋が硬いとストレスが腰にかかります。

腰の負担を軽減させるためには股関節と胸椎の柔軟性が大切となります。

腰を支えるインナーマッスルが重要

 

体幹にはインナーマッスルと呼ばれる腰を保護する筋肉が存在します。

腹横筋、多裂筋、大腰筋と呼ばれる筋肉です。

これらは腰椎の安定性を高めて保護する役割を持っています。

スポーツで手や足を動かす際には体幹が安定している事が重要で、これらの筋肉が手足の動きよりも先に働く事で安定した動作が可能となるのです。

腰椎分離症予防の為のストレッチ

腰痛を予防するためには腰の負担を減らす必要があります。ストレッチの方法を紹介していきます。

腰椎分離症のストレッチ①腸腰筋

 

腸腰筋は腰椎から大腿骨についている筋肉で、主に股関節を曲げる動作、骨盤を立てる前傾という動作に作用します。

この筋肉が硬くなるとバレーのスパイク動作など身体を後ろに反らす際の股関節と骨盤の動きを阻害してしまいます。

腰椎分離症の患者さんではこの腸腰筋が硬くなっている事が多くみられます。

腸腰筋のストレッチ方法

腸腰筋のストレッチ

 

片膝をついて伸ばしたい方を後ろにします。

そのまま胸を張ってお腹を前に突き出していき、股関節の全面が伸びているのを感じて30秒以上ゆっくりと伸ばします。

腰椎分離症のストレッチ②大臀筋

 

大臀筋は骨盤から大腿骨についている筋肉で、主に股関節を後ろに伸ばす動作、骨盤を後ろに倒す後傾という動作に作用します。

この筋肉が硬くなると野球のバッティング動作やテニス、ゴルフのスイング時の骨盤の回旋の動きを阻害してしまいます。

大殿筋のストレッチ方法

 

 

伸ばす方の足を上にして図のように組みます。

 

そのまま上半身を前傾させていきます。お尻が伸びているのを感じながら30秒以上伸ばします。

腰椎分離症のストレッチ③広背筋

 

広背筋は腕の上腕骨から骨盤まで付いている大きな筋肉です。
主に腕を後ろに伸ばす伸展という動きに作用しますが、骨盤に付いているため骨盤の動きにも関係します。

硬くなると大臀筋と同じく回旋の動きを阻害してしまいます。

広背筋のストレッチ方法

 

四つん這いになって両手の小指と肘をくっつけます。
その状態から踵とお尻を近づけるようにかがんでいきます。

両手の小指と肘が離れないようにする事がポイントです。

腰痛持ちならストレッチ・ポール

ストレッチ・ポールは自分の体重を預けるだけで無理なくストレッチが出来る優れものです。
ただ横になるだけでも効果がありますので使ってみることをおススメします。

腰椎分離症の予防の為の筋トレ

 

腰が痛いとコルセットを処方される事が多いかと思いますが、腹横筋はコルセットのようにお腹の圧を高めて腰を安定させる作用があります。

またスポーツ動作などで手足を動かす際に、手足の筋肉よりも腹横筋が先行して働く事で体幹が安定し、効率の良い手足の運動を導く事が出来ます。

腰椎分離症の筋トレ①腹横筋

ドローイン

ドローイン

 

①仰向けに寝て大きく息を吸いお腹を膨らませます
②息を吐きながらお腹を凹ましていきます
③お腹を凹ませた状態を保ったまま、呼吸は普通に行います
④このままお腹を凹ませた状態を保ちます

プランク

プランク

 

図のように肘とつま先で体を一直線に保ちます。

腰椎分離症の筋トレ②多裂筋

 

多裂筋は背骨全体についている筋肉で、上下の背骨を繋いで安定させる筋肉です。

補助的に体幹を回旋や側屈させますが、大きな役割は背骨を連結させて安定、固定させる作用です。
腹横筋同様、動作先行して働き体幹を安定させます。

多裂筋筋トレ

 

四つん這いの姿勢から右手、左足を真っ直ぐに伸ばして体を一直線に保ちます。
左右の手足を交互に行います。

まとめ

●ジュニア期の腰痛は腰椎分離症をまず疑って正確な診断を受ける事。

●腰椎分離症は骨折であるため骨の癒合を最優先させてスポーツを休止する事が重要

●腰へのストレスをかけないためには股関節、背骨の柔軟性、インナーマッスルの働きが重要

豊田早苗(医師)●文
桜井佑葵(理学療法士)●文

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